2019年10月7日月曜日

Exhibition (JP): Memories in Movement 動いている記憶


作家: 磯谷博史、Ji Seon KimJungsik Lee、坂本夏海、山下美幸、Woon Zung
キュレーター:福島ゆり

日程:20191012日ー30日 12:0019:00 月、火曜休廊
オープニングレセプション:20191012日(土)17-19pm

会場:ギャラリーplaceMAK Yuen Hui & Lazer
39-26, Hongjecheon-ro 4-gil, Seodaemun-gu, Seoul

本展は国際交流基金ソウル日本文化センターの後援を頂いております。

問い合わせは下記の連絡先までお願いいたします。
E. placemak@naver.comT. 017-219-8185(韓国語)
E. info@yamakiwagallery.com(日本語、英語)




ソウルのインディペンデント・ギャラリーplaceMAKにて、日韓6名のアーティストによる展覧会Memories in Movementを、やまきわ美術館ディレクターの福島ゆりがキュレーション企画いたしました。

私たちが経験する時間は一直線上に刻まれるリズムではなく、時に伸び縮みし、現在と呼応
しながら常に生き直され、分岐していきます。これはフィジカルな仕組みや、個的かつ集合的な体験を留め共有する術に起因しており、記憶とは私たちの心と身体を通じて共鳴する時間を示すと言うこともできるでしょう。

本展では、時とともに変わりゆく記憶の複雑なありさまを、アーティストの多様な視点と方法を通じて呈示することを試みています。
 
坂本夏海の新作、版画とビデオによるインスタレーションは、スコットランドの魔女狩りとナナカマドの魔除けの迷信をテーマに、記憶の継承について問いかけます。15世紀以来、ヨーロッパ中に広がった魔女狩りという出来事を、災いや病を退けるとされてきたナナカマド、被害者の多くが携わっていた酪農、当時のありさまを伝える出版物、世代を越えて語り継がれるエピソードなど、イメージの響き合いから描き出しています。これは、呪いや死と癒しをもたらす両義的存在として、集合的に実体化された魔女とその悲劇の忘却に抗うモニュメントと
捉えることができるでしょう。

HIV保菌者として生きる日々の現実をパフォーマンスやビデオ作品で吐露するJungsik Leeは、偏見による個の忘却が孕む暴力性について静かに語ります。毎日飲まなければならない治療薬の服用記録を元に作られた本作は、病に支配されたアーティストの暮らしをうつしています。かけがえのない生のさなかにある個人が、HIV感染者としてのみ社会的に認知される状況は、
ウイルスと存在の不全化に蝕まれる苦悩を意味するものです。自らを突き放した目線で癒す
試みは、他者の生への向き合い方とその共有のあり方を、私達に切実に問いかけています。

記憶にあるイメージを起点に展開する山下美幸の作品は、即興的な手法の強みを活かす軽やかなドローイングの連作です。5年前に見た綱渡りをする少女の写真をもとに、鉛筆・水彩・
マスキングテープなどを用いて、イメージと手の動きを素早く結びつける過程には、場の力も
作用しています。瞬間をレンズを通して定着させた写真から、終わりなき現在の反復によって可能性を押し広げる試みを通じて、アーティストは、けして固着することのない出来事の記憶と自身の存在そのものに向き合い続けています。

Ji Seon Kimは、山下と同じように記憶に基づいて絵画を制作しますが、折り重なるイメージの共鳴そのものを表現する対照的な手法を選んでいます。彼女はむせかえる濃密な自然の中で過ごした後にスタジオへと戻り、30-40cm四方程度のキャンバスに、色彩・音・湿度や温度
など、自らの身体に刻まれた断片を次々とかたちにしていきます。絶えざる好奇心と生命のエネルギーは、アーティストがWonder-siteと呼ぶ、巨大な架空の風景へと構築されてゆくのです。
既知と未知のはざまから立ち上がる光景は、鑑賞者を新たな冒険の舞台へと誘っています。

磯谷博史Lagは、落下する額縁を捉えた写真をひとつのフレームに収めた作品です。縁取られた写真は、瞬間的な過去の出来事を留めたイメージであるとともに、現在と失われた時の
交感を可視化することによって、対峙する人にめまいや倒錯感をもたらします。本作は、額縁というフィジカルな存在そのものを要とすることから、複製することができません。抽象的な表現でありながら、私たちの今ここにある具体的で身体的なありさまが、一点に顕在化されているのです。

人為によって生み出されるモノゴトの「ずれ」に関心を寄せるWoon Zungは、広島の地質学レポートから着想したビデオ作品を制作しました。7万人の命を奪い、街の9割を壊滅させた原爆投下から約70年後、広島湾沿いの砂浜で、著者らが発見したガラスの断片は、爆発時の高温で溶けた建物の残留物と捉えられています。作品は、プラスティックや石などの物体を3Dスキャンした画像や、様々な都市の破壊映像から成り、火・夢・凝固・再生・擬態・汚染といったイメージが繰り返し現れます。時代や場所を超えて残されたものが伝える出来事の断片的記憶の集積は、新たな想像力や経験への扉を示しているのかもしれません。

本展では、多様な記憶のプロセスのかたちやイメージを呈示することで、時代や場所を超え、
繊細かつダイナミックに拡張しゆく経験のあり方について模索したいと考えています。

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