Dates: 2018.12.9- 2019.1.27 10am- 17pm Fri, Sat, Sun (Closed 12.14- 1.6)
Opening: 2018.12.8 2pm-4pm
今回の企画はカナダ・カウンシル・オブ・アーツの助成を受けています。
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「そのとき炎の舌はことごとく抱き寄せられ
あい結ばれて火の王冠となり
かくて火とバラは一つになる。」[1]
(T. S. エリオット, 森山泰夫訳)
エボニー・ローズはやまきわ美術館におけるアーティスト・イン・レジデンスを行い、地域の人たちとのやりとりや日本の古民家の有り様に応えながら、新作のインスタレーションとドローイングの連作を作ります。インスタレーションは幾つかの空間を連ねるもので、ローズの他の作品に多く見られるように、現在という時、残された手の感触、現象の変化など、時間感覚を喚起させるものとなります。またこの新作においては、暗闇が強い存在感を持ち、死を暗示するものになっています。「生死(しょうじ)」という仏教の言葉は「life-death」と英語に訳されます。この二つの語が小さなハイフンで分けられ、繋がる[2]ことに触発され、このインスタレーションでは死と暗闇は生と光と大きく隔たれておらず、大きな全体の部分となっています。
玄関に至る入り口の床には、自然でありながら完全な円形をした水たまりが置かれ、炭になった蓮根が氷の塊の中で固まり、水たまりの中心に位置しています。これは敷居のような機能を持ち、観客はその前で止まり、内側に入るために大きく回り道をしなければなりません。変質した蓮根は凍り、墓石のように見える氷の塊は溶け、円形の水たまりは蒸発しますが、これは生の循環、消失、大きな時間の流れを思い起こさせます。また、向かいの壁には蓮根の断面のドローイングがあります。蓮根の断面には酸素を通すための穴があり、花のような形をしていますが、ここで根は具象的にも抽象的にも描かれており、抽象化された蓮の花と見ることもできます。
他の空間(ギャラリーの2階)には、切り取られた障子紙が柱のように、上下二つの部屋を貫き、暗闇の中へと消えていきます。引き戸である障子戸は日本建築にありふれたもので、やまきわ美術館にも数多くあり、戸を開けたり閉めたりすることで一つの空間が二つになったり、二つの空間が一つになったりします[3]。ここでは紙に様々なパターンの折り目がつけられており、建物内に存在しているパターンを複製しています。自然な円形の切り抜きは不在、または、展示内の他の円を模した穴として存在しています。この柱はモニュメンタル(記念碑のような巨大さ)とダイアファナス(透けるような軽さ)の間に位置するものです。玄関では水と土という素材が地面近くに位置していましたが、ここでは長く白い柱がほの暗い部屋の中に立ち、微風に合わせて柔らかく動き、天上を思わせます。窓から映る繊細な色合いが紙の表面で光り、細かい折り目がくっきりと見えます。
インスタレーションの隣の部屋では17枚のバラのドローイングが展示され、これも蓮と呼応しています。このドローイングの反復は鍛錬や「より親密に知ること」を想起させます。氷の中の蓮とドローイングのバラという、二つの花の組み合わせは、ローズと集落の人たちとの出会いにも連なっています。日々繰り返される親切な行い(毎日誰かが野菜やおかずを持ってきてくれたり、蓮根などの植物を炭にする方法を教えてくれたり)に感銘し、ローズは17枚のドローイングを、集落の17軒の家族のために作りました。彼女はバラを自分の故郷の象徴として、またバラと蓮の象徴性から選びました。
[1] Eliot, T.S. Four Quartets,Little Gidding, (大修館書店, 1980).
[2] Ostaseski, Frank. Five Invitations: Discovering What Death Can Teach Us about Living Fully, (Flatiron Books, 2018, p. 1).
[3] Grande, John K. Balance: Art and Nature, (Black Rose Books, 2014).
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